5軸加工機のメリット

2023.02.15

文:extamin

Shere:

5軸加工機は、従来の3軸加工機と比較してどのような違いがあるのでしょうか。今回はその違いを3つのメリットとして具体的に解説します。

メリット1.突き出し量の少ない工具で加工できる

5軸加工機は、自由な方向から加工できるため、工具の突き出し量を短くすることが可能です。3軸加工機で深物を加工する場合、加工物と工具が干渉すると加工が失敗しやすくなるため、工具の突き出し量を長くしなければなりません。

突き出し量が長くなるほど、工具の剛性が低くなります。剛性とは「物体の変形しにくさ」です。剛性が高くなるほど物体が変化しにくいことになります。突き出し量が長いと、工具の動きにブレが生じ、加工が難しくなるため、精度を保てません。限界まで長く突き出しても、工具が届かない場合もあります。

5軸加工機の場合は、深物であっても工具、または加工物を傾けられるため、短い突き出し量による加工が可能になるのです。突き出し量が短ければ工具の剛性が高くなるため、安定した加工を行えます。また、剛性が高くなると、工具に生じる衝撃が少なくなるため、工具寿命が延び、ランニングコストの削減にも繋がるのです。

メリット2.一度のチャッキングで多面加工ができる

3軸で多面加工をする場合、面を変更して加工するたびにチャッキング(工具や工作物の固定)などの段取り替えを行う必要があります。自動で治具を交換するマシニングセンタにおいても、3軸の場合は加工する面を変えるためにテーブルや加工物を動かさなければなりません。

チャッキングが多くなると、設置する際に加工箇所の位置がズレたり、段取り替えに時間がかかったりするため、できる限り動かす回数を減らすことが求められます。

5軸加工機は、加工物または工具を回転させたり、傾けたりできるため、取り付け面を除けば、一度のチャッキングで多面加工が行えます。多面加工を同時に行うことで、高精度を維持でき、段取り替えの時間を削減できるのです。

メリット3.切削工具の加工位置を選べる

5軸加工機では、切削工具の加工位置が選べるため、切削条件の良い工具部分で加工が行えます。具体的には、先端が球状になっているボールエンドミルによる加工です。曲面や傾斜面などの3次元形状加工では、ボールエンドミルが多用されます。

3軸加工の場合、加工物を斜めに設置することが困難なため、ボールエンドミルと加工物を垂直にして加工しなければなりません。工具の先端の面積が大きい場合、中心の切削速度はゼロになるため、切削断面に切りクズ跡など、いわゆる「むしれ」が生じてしまいます。

5軸加工機はボールエンドミルと加工物の接触箇所を任意で設定できるため、先端による加工を行う必要がなく、加工面の精度が向上するのです。